本書の面白さは、西崎が手掛けたアニメ作品の評論には誌面を割かずに、創価学会との繋がりや暴力団と交流があったなどの実話系雑誌好みのエピソードをふんだんに盛り込んでいることにある。創価学会で暗躍した山崎正友弁護士とも太いパイプを持っていた西崎は、テレビシリーズの再構成にすぎなかった『ヤマト』を全国の映画館で上映するために、創価学会系の団体「民音」で前売り券を30万枚さばいてもらった。また、住吉会系の組長の葬儀に西崎は100万円の香典を届けたなど、アニメ史の裏側が明かされ、ページをめくる手が止まらなくなる。(長野辰次)