2018-11-21

2017年のベストセラー第1位

「アハハハ」
 とお医者さんは笑う。私も笑う。
「あなたはいつも気持が明るい人だからいいですな」
「アハハハ」
 とまた私は笑う。この笑いに籠(こも)るいうにいえぬ悲哀を誰が知る。
 今は死への序曲なのである。

 若者は夢と未来に向って前進する。
 老人の前進は死に向う。
 同い年の友達との無駄話の中で、我々の夢は何だろうということになった。
「私の夢はね、ポックリ死ぬこと」
 と友人はいった。

【『九十歳。何がめでたい』佐藤愛子(小学館、2018年)】

 2017年のベストセラー第1位である。既に128万部を突破しているそうだ。凄いね。佐藤愛子佐藤紅緑〈さとう・こうろく〉の娘で、1969年に直木賞を受賞している。そして昭和40年代からの学会理解者でもある。明るく、さっぱりした性格の持ち主で、藤原ていと共に忘れ難い人物だ。

九十歳。何がめでたい
佐藤愛子
小学館
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2018-11-19

「新しい歴史教科書をつくる会」の志

『決定版 国民の歴史』西尾幹二

 ・「新しい歴史教科書をつくる会」の志

 このほど西尾さんが、『国民の歴史』という【大きな】本をお書きになられました。それはボリュームや「部数が何十万部売れた」といった量的なインパクトの大きさだけではなく、日本人の知性や歴史への視線に与えた影響という点で、非常に大きなものがあったという意味です。(中略)
 結局この本で何が一番「大きい」かというと、私は内容が突きつけているものだと思うのです。この本はいくつかのテーマをを合わせたテーマ論集のようになっていますが、それぞれの論点をつなげると、一つの体系を持った日本文明論が見えるという、何よりも論としてのスケールの大きさを持っています。いい換えると、日本史をタテに貫く一つの大きな史観が、はっきりと提示されているのです。
 こういう類の本は、戦後はおろか、戦前の史学書などを見ても、あまり例がないように思います。戦前にも日本文明論はいくつも出ていますが、概念的に書かれたものばかりです。とくに最近の研究成果や史観の変化という動向を踏まえつつ、多くの論点を併せ持ちながら、全体として独自の明確な史観をこれだけのスケールをもって展開した本は、ほかになかったと思います。(中西輝政)

【『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政(PHP研究所、2000年)】

『国民の歴史』に対して保守論客の第一人者である中西輝政が真っ先に反応した。実に清々(すがすが)しい態度である。専門家であればあるほど「生意気だ」とか「畑違いだ」といった安易な批判に陥りやすい。初めての対談でありながらも肝胆相照らす雰囲気が漂い、深い学識が通う。

 日本近代史が見直されるきっかけとなったのは「新しい歴史教科書をつくる会」(1996年)の発足であった。当時は右翼学者の集まりだと多くの人々が思った。私もその一人である。何も考えずに軍国主義と結びつける声が目立った。西尾幹二は初代会長を務めた。

 日蓮系と同様で正義を掲げる人々には分裂しやすい傾向がある。「つくる会」も例外ではない。小林よしのりや西部邁〈にしべ・すすむ〉が去り、そして西尾も去っていった。更には出来上がった教科書があろうことか谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉にこき下ろされる始末であった。

 有為転変はあったものの「つくる会」の志は確実に時代の新しい扉を開いた。戦後70年にもわたって続いた呪縛を解いた。正しい歴史認識で自虐史観の正体を暴いた。21世紀に入り顕著となったこの風潮が実は安倍政権を力強く支えている。

日本文明の主張―『国民の歴史』の衝撃
西尾 幹二 中西 輝政
PHP研究所
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2018-11-16

地上波が報じない黄砂のいい影響/共産党志井委員長のデマツイート

 池上彰と武田邦彦の差がジャーナリストと科学者の差であると思う。アウンサン・スーチーの話は常識だ。武田が出る虎ノ門ニュースを私は必ず2回見ている。

2018-11-15

諸国家を超えた正義の視点は成り立つのか?

 ・諸国家を超えた正義の視点は成り立つのか?

『日本文明の主張 『国民の歴史』の衝撃』西尾幹二、中西輝政

 当時の戦勝国がぶつかった問題は、ナチスドイツが軍事的な要請からではなく、それとはまったく無関係に600万のユダヤ人、50万人のジプシー、200~300万人に及ぶ東欧諸国の人々を集団収容所で殺戮(さつりく)した事実が明らかとなり、その計画的な大量殺人を見逃(みのが)すわけにはいかないという端的(たんてき)にその一事であった。そこでまったく新しい人道に対する罪 Crime against Humanity という名における事後法承知の措置(そち)がとられたのである。ニュルンベルク裁判は、勝者の一方的な報復裁判といわれた東京裁判に比べれば、今述べた事情からはるかに多く普遍的正義の立場に立っていると、自己弁解する余地がありうる。ナチスドイツの民族的絶滅政策が通例の戦争犯罪とは異なる、弁解の余地のない惨劇であったがゆえに、戦勝国側は日本に対するのと違って、一義的な正義の立場をとりやすかったためと思われるからである。
 しかし、ニュルンベルク裁判を可能にする正義の視点とはいったいなんであろう。諸国家を超えた正義の視点は、はたして成り立つのか。 Humanity に当たるドイツ語 Menschlichkeit は人道であると同時に「人類」の意味である。humanity も humankind の意味であり、まさに「人類に対する罪」と訳されるべきだろう。本章の冒頭に掲げた「人類の法廷は可能か」以下の一連の問いがまさにここで初めて大規模な形式で地上に提起されたのだった。
 しかしここで立ち停まってよく考えていただきたい。その正義の視点も、しょせんは戦勝国の力の結果であった事実は争えない。ドイツは力によって沈黙させられたのである。それが民主主義の勝利、理性と善の勝利であったなどというのは作り話であって、力が一定の効果を収めたあとの結果にすぎない。

【『決定版 国民の歴史』西尾幹二〈にしお・かんじ〉(文春文庫、2009年/単行本は西尾著・新しい歴史教科書をつくる会編、産経新聞社、1999年)】

 百田尚樹の『日本国紀』と併せて読むといいだろう。蒙が啓(ひら)かれる読書の醍醐味を味わうことができる。

 西尾幹二は毀誉褒貶の多い人である。私が注目したのは福島原発事故の時だった。ネット番組の座談会で「これまでは原発推進に賛同してきたが反対せざるを得ない」と言い切ったのだ。武田邦彦も同様だが素直に過ちを認める姿勢は真理を探究せんとする学者の本領から発揮されたものだろう。「君子(くんし)は豹変(ひょうへん)し、小人(しょうじん)は面(おもて)を革(あらた)む」(『易経』革卦〈かくか〉)とはこのことである。多くの場合、思想や立場、所属組織などが邪魔をして自己の主張にしがみつくタイプが多い。

 西尾はまた見るからに傲岸不遜な印象を受けるが実は情の人である。無名の西尾に注目し表舞台に引っ張り上げたのは三島由紀夫だった。二人はたった一度だけ会った。西尾はその出会いをしっかりと心に置いた。三島が自決すると進歩的文化人は時代錯誤も甚だしいと声の限りを尽くして嘲笑した。西尾は文学者としてペンをもって三島を擁護した。著名な評論家に対しても恐れることなく真っ向から批判し抜いた。

 東京裁判の目的は日本を悪役に仕立てることで原爆ホロコーストと東京ホロコースト(東京大空襲)で無差別に非戦闘員を殺戮した米軍の罪を隠すことにあった。更に白人帝国主義を終焉に至らしめた日本を二度と立ち上がることができないようにしておく必要があった。いわば第二次世界大戦後の日本のシナリオが作成されたわけだ。GHQは7年間の占領で完全に日本から牙を抜いた。

 諸国家を超えた正義の視点が成り立つことはない。だから国家は戦争という手段を手放さないのだ。戦争は外交の延長に位置する。人類の歴史は戦争の歴史である。我々は戦争が大好きなのだ。この事実を認めずして平和を説いても意味がない。学校からいじめがなくならいのはなぜだ? いじめが好きだからだよ。

 結論――「諸国家を超えた正義の視点」から戦争は行われる。

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2018-11-14

アフガンの英雄

マスード



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2018-11-13

原爆投下映像に思わず拍手するオバマ大統領

 みなべ蔵之介(@tomorrows333)氏のタイムラインで知った。プーチン大統領を見直した。オバマが大統領時代に行った核軍縮は古くなった核兵器を廃棄しただけのこと。政治家が語る平和には人々を欺く目的がある。

『日本国紀』が発売日の時点で40万部のベストセラーに


日本国紀
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百田 尚樹
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2018-11-09

美しい物語に隠された嘘

周恩来 日本を最も愛した中国人

 ・口先だけの革命の本質は反革命
 ・美しい物語に隠された嘘

「あの店はあなた方、外国同志達のためにあるのです。私もあの店の洋菓子がおいしいことを知っています。でも今は食べません。もう少ししたら、我々は今の困難(100年振りの大災害による食糧不足)を克服して6億人民全部がいつでも好きなだけ、おいしい菓子を食べられるようになります。そうしたら食べます。その時は、おいしい菓子が一段とおいしく感じられるでしょうから、その時までとっておきますよ」
 と言って笑った。彼はその日、中国の笑い話やことわざについて色々と話してくれ、僕達を腹の皮がよじれるほど笑わして帰っていった。しかし、彼の前に出されたシュークリームはそのまま残っていた。僕達一家4人は、同じように手をつけなかった菓子を前に、妙に白けた気持ちになった。僕は苦いものを飲み込むようにそれを食べた。少しもおいしくなかった。

【『青春の北京 北京留学の十年』西園寺一晃〈さいおんじ・かずてる〉(中央公論社、1971年)】

 昭和40年代以前に入会した学会員の家には「必ず」と言ってよいほど書棚に並んでいる一冊である。一般書の少ない我が家の本棚にもあった。私は二十歳前後で読んでいたく感激した覚えがある。西園寺一晃は国交回復前の中国で思春期を過ごした。その後、阿部vs.池田紛争や日中友好に関する記事で聖教新聞に登場した時は「あの西園寺か!」と驚いたものだ。

 ピンポン外交が日中友好に果たした影響は大きい(周恩来の動画を参照のこと)。後藤鉀二〈ごとう・こうじ〉日本卓球協会会長(アジア卓球連盟会長、愛知工業大学学長でもあった)をバックアップしたのが一晃の父・公一〈きんかず〉であった。戦時中に西園寺公と呼ばれた公望〈きんもち〉の孫に当たる。

 公一はマルクス主義者で中国のスパイであった。 過去にはゾルゲ事件に連座して公爵家廃嫡となっっている。果たしてスパイの子もまたスパイとなるのであろうか? なる、と私は考える。なぜなら共産主義・社会主義勢力の息が掛かったスパイは、職業(公務員)スパイと異なり国益ではなく思想に基づく行動であるからだ。

 35年前に私がノートに記したテキストを今読むと全く異なる風が胸の中を吹く。「100年振りの大災害による食糧不足」との括弧書きこそ左翼の真骨頂を示している。無論、若い私には知る由もなかった。今なら、ちょっと検索しただけで誰でも知り得る程度の低い嘘である。

「大災害」と書いてあるが実際は毛沢東による失政(大躍進政策)が直接的な原因だ。更に「食糧不足」と極めて控え目な表現をしているが、この時2000~4000万人の中国人が餓死しているのだ。毛沢東は人類史上においてスターリンに次ぐ大虐殺者とされるが、これは餓死者数を含んでいるためだ。

 正義を信ずる者は目的のために嘘をつく。マクドナルドで正義を注文すればセットメニューで欺瞞を勧められることだろう。美しい物語に隠された嘘を見抜け。

青春の北京―北京留学の十年 (1971年)
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顕正会の会員が200万人増えた!?

2018-11-08

死後の世界を量子論で科学する

 これは発想の方向がまずい。仮に死後の世界があったとしても我々が想像するような世界ではないし、なかったとしても誰も困らない。

2018-11-07

祖国愛の欠如

『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
『祖国とは国語』藤原正彦

 ・近代的合理精神の破綻
 ・祖国愛の欠如

 祖国愛に対しては、不信の目を向ける人が多いかも知れません。「戦争を引き起こす原因になりうる」などと、とんでもない意見を言う人が日本の過半数です。
 まったく逆です。祖国愛のない者が戦争を起こすのです。
 日本ではあまりよいイメージで語られない「愛国心」という言葉には、2種類の考えが流れ込んでいます。一つは「ナショナリズム」です。ナショナリズムとは、他国のことはどうでもいいから、自国の国益のみを追求するという、あさましい思想です。国益主義と言ってよい。戦争につながりやすい考え方です。
 一方、私の言う祖国愛は、英語で言うところの「パトリオティズム」に近い。パトリオティズムというのは、自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛することです。これは美しい情緒で、世界中の国民が絶対に持っているものです。(中略)
 わが国が現在、直面する苦境の多くは、祖国愛の欠如に起因すると言っても過言ではありません。

【『国家の品格』藤原正彦(新潮新書、2005年)】

「品格」ブームを巻き起こしたベストセラーである。私は藤原のデビュー作から読んできた古いファンの一人である。小林よしのり作『戦争論』と本書の2冊が社会に与えた影響は大きい。東京裁判史観の迷妄を打ち破ったといっても過言ではない。更に「新しい歴史教科書をつくる会」(1996年設立)に対する誤解まで解いた。

 私が日本の近代史を見直したのは2014年からのことで目覚めるのがやや遅すぎた感がある。創価学会を通して身に染み込んだ左翼思考がどれほど根深いものであるかを思い知った。佐藤優〈さとう・まさる〉が『小説 人間革命』を持ち上げるのも同書が左翼史観に貫かれているためだ。佐藤ほどの博覧強記であれば当然、ゴーストライター説は知っているはずだ。それを知った上で敢えて称賛するところに佐藤のあざとさがある。

 もともとポリティカル・コレクトネスは白人による人種差別を覆い隠すために編み出された概念である。日本に人権という概念がなかったのは、逆説的に言えば人権を踏みにじられることが少なかったからである。奴隷も存在しなかったし、魔女狩りのような大虐殺の歴史もなかった。

「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない」と書きながら欧米列強の帝国主義に触れていないのは典型的な左翼の論法である。日本があの戦争に立ち上がらなかったならば、アジア、中東、アフリカは今もなお植民地であり続けたことだろう。

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21世紀の宗教改革: 小説『人間革命』を読む
佐藤優
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周恩来 日本を最も愛した中国人

 ・周恩来 日本を最も愛した中国人

美しい物語に隠された嘘

 ややプロパガンダ色が強いがいい内容だ。池田も登場する。BSテレビ東京の番組か。