2018-11-07

祖国愛の欠如

『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』小林よしのり
『祖国とは国語』藤原正彦

 ・近代的合理精神の破綻
 ・祖国愛の欠如

 祖国愛に対しては、不信の目を向ける人が多いかも知れません。「戦争を引き起こす原因になりうる」などと、とんでもない意見を言う人が日本の過半数です。
 まったく逆です。祖国愛のない者が戦争を起こすのです。
 日本ではあまりよいイメージで語られない「愛国心」という言葉には、2種類の考えが流れ込んでいます。一つは「ナショナリズム」です。ナショナリズムとは、他国のことはどうでもいいから、自国の国益のみを追求するという、あさましい思想です。国益主義と言ってよい。戦争につながりやすい考え方です。
 一方、私の言う祖国愛は、英語で言うところの「パトリオティズム」に近い。パトリオティズムというのは、自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛することです。これは美しい情緒で、世界中の国民が絶対に持っているものです。(中略)
 わが国が現在、直面する苦境の多くは、祖国愛の欠如に起因すると言っても過言ではありません。

【『国家の品格』藤原正彦(新潮新書、2005年)】

「品格」ブームを巻き起こしたベストセラーである。私は藤原のデビュー作から読んできた古いファンの一人である。小林よしのり作『戦争論』と本書の2冊が社会に与えた影響は大きい。東京裁判史観の迷妄を打ち破ったといっても過言ではない。更に「新しい歴史教科書をつくる会」(1996年設立)に対する誤解まで解いた。

 私が日本の近代史を見直したのは2014年からのことで目覚めるのがやや遅すぎた感がある。創価学会を通して身に染み込んだ左翼思考がどれほど根深いものであるかを思い知った。佐藤優〈さとう・まさる〉が『小説 人間革命』を持ち上げるのも同書が左翼史観に貫かれているためだ。佐藤ほどの博覧強記であれば当然、ゴーストライター説は知っているはずだ。それを知った上で敢えて称賛するところに佐藤のあざとさがある。

 もともとポリティカル・コレクトネスは白人による人種差別を覆い隠すために編み出された概念である。日本に人権という概念がなかったのは、逆説的に言えば人権を踏みにじられることが少なかったからである。奴隷も存在しなかったし、魔女狩りのような大虐殺の歴史もなかった。

「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない」と書きながら欧米列強の帝国主義に触れていないのは典型的な左翼の論法である。日本があの戦争に立ち上がらなかったならば、アジア、中東、アフリカは今もなお植民地であり続けたことだろう。

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