2016-03-12

兵糧攻め


 安保法案反対署名を立ち上げた一人の、さのじゅんさんが兵糧(ひょうろう)攻めに遭っている模様。彼はユーモリストである。現実を突き放す視線がなければユーモアは生まれない。たぶん兵糧攻めはとっくに覚悟していたことだろう。もちろん創価大学が雇い止めしたのは単なる偶然の可能性もある。だが、よりによってこのタイミングだ。誰しも兵糧攻めと思わざるを得ないだろう。

 アカデミックの世界から何らかの反対意見を表明することは社会を健全に保つ営みである。まして参議院が良識の府として機能していない(党議拘束で縛られるため)現在においては不可欠といってよい。学問の世界はまだ政治よりもきれいな世界であろう。いくらかの功名心があったとしても、単純な利益だけを追求しているわけではない。例えば福島の原発事故を通して、賛成派から宗旨替えをした武田邦彦や西尾幹二などを挙げることができる。「君子は豹変し、小人(しょうじん)は面(おもて)を革(あらた)む」(『易経』革卦〈かくか〉)という。本性が変わらぬところに小人の小人たる所以(ゆえん)がある。

 創価学会の周辺から聞こえてくるキーワードは査問・戒告・処分・活動停止・役職解任・除名・粛清……そんなのばっかりだ。静かに、だが確実にスターリニズムの風が吹き始めている。

 創価大学の学生諸君はどのように受け止めるだろうか。あるいは受け止めないのか。若き日に残したシミのような汚点は年を重ねるごとにその大きさを増してゆく。清濁併せ呑むのは40代になってからでも遅くはない。