ジェロニモについて行きたければついけ行けばいいし、行きたくなければ、行かなくていい。一人ひとりに権限があるので、それぞれがやりたいようにする。「するべきだ」という言葉はアパッチ族の言語に存在しない。「強制する」という概念は、彼らには理解しがたいものだ。
【『ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ』オリ・ブラフマン、ロッド・A・ベックストローム:糸井恵〈いとい・けい〉訳(日経BP社、2007年)】
再掲。宗教とは、「せよ」という命令であり、「するな」という禁止である。人間を鋳型に嵌(は)めるのが宗教機能といってよい。もちろん本来は違う。コミュニティ形成に伴って戒律が生まれ、やがて社会が構築されると法律と化す。初期経典に人間を束縛する強制性は感じられない。サンガが発生した頃に「決まり」と化したのであろう。
アパッチ族の関係性は理想的だ。しかし白人との戦争には敗れた。この事実が重い。結局、戦争を回避し得ない限り、軍隊的な組織に優位性があるのだろう。
創価学会が発展した原因はいち早く組織化を成し遂げたところに求められる。確固たる命令系統が強味であった。しかし各人が自分の頭でものを考えるようになると命令は機能しない。組織が弱体化し、力のないリーダーが増えると、「だったら、あんたが自分でやれよ」と言われたら、それまでである。