2018-07-10

ゴーストライター説について考える

「小説『人間革命』は篠原善太郎が書いたものだ」との指摘はかなり古くからあり、ネット上では1990年代から散見された。ある学会員から「実はその通りなんですよ」と教えてもらったこともある。当時はまだ活動していたので「フム、そうか。でもまあ、ブッダもイエスも孔子も他人が書いたものが残っているわけだから」と無視を決め込んだ。自分にとって不都合なことを考えるのは体力を要するからね。そもそも創刊号以降の『大百蓮華』や『前進』を読んできた私でさえ篠原善太郎なる人物を知らないのだ(篠原誠さんと関係があるのかどうかもわからず)。

人間革命の文体のこと。 - 気楽に語ろう☆ 創価学会非活のブログ☆

 ゴーストライター説を確信したのは15年ほど前のことだ。『グラフSGI』の表紙に「『若き日の日記』を清書する池田SGI会長」の写真があった。!――ビックリマークが頭に点(とも)ったのは0.5秒くらいであった。「自分の日記を清書するなどということがあり得るだろうか? しかも激務の人物が」。

 私が創価学会を離れるに至った最大のきっかけはルワンダ大虐殺であり、その後クリシュナムルティと遭遇したことによる。また矢野本の影響も決して小さくない。書籍そのものよりも、矢野絢也という一個人に対する創価学会の仕打ちがあまりにも酷かった。ま、組織的リンチといってよかろう。やってることが新左翼と大差ない。

 それから何となく学会批判本に目を通してきたが意外にも良質な内容が多く、自分が知らない事実もたくさん教えられた。

 ゴーストライター説が知られるようになったのは離反した原島嵩が「池田の著作は特別書籍部が執筆している」と暴露したのが嚆矢(こうし)か。原島本人もメンバーの一人であったというから信憑性は高い。

 左翼系匿名ライターと思われる七里和乗〈しちり・わじょう〉の『池田大作 幻想の野望 小説『人間革命』批判』(新日本出版社、1994年)では、原稿執筆をする池田近影に「資料が写っていない」事実をゴーストライター説の証拠としている。決定的なのはグループSという匿名本部職員による『小説聖教新聞 内部告発実録ノベル』(サンケイ出版、1984年)で、句歌以外は全部特別書籍部が書いていると指弾。『忘れ得ぬ同志』で紹介されている学会員は反池田分子を懐柔する狙いがあったという件(くだり)には衝撃を受けた。昨今話題となっている高橋篤史著『創価学会秘史』(講談社、2018年)が優れているのは『人間革命』『若き日の日記』『私の履歴書』などを一切資料として引用してないところだ。その意味から申せば溝口敦の学会批判は失敗していると言わざるを得ない。

江藤俊介や七里和乗なんていないんです!(追記・訂正あり) - bogus-simotukareの日記

『広布第二章の指針』には確か2ヶ所と記憶しているが、小説『人間革命』に関して「自分で書いているから大変なんです」と池田は語っている。幹部用冊子の『前進』にも同様の発言があった。初めて読んだ時から私は違和感を覚えた。作家が「自分で書いているから」と言うだろうか? また、ある副会長は「原稿用紙を見るだけで吐き気がする」という池田の発言を紹介していた。それは「原稿を書き写すのが大変だった」からではあるまいか。もちろん邪推に過ぎない。

 正反対の情報もある。例えば人間革命担当だった戸松記者の話を聞いたことがあるが、体調の悪い池田が口述する様子を語る彼の話が嘘とも思えない。

 尚、篠原善太郎説については主要幹部でなかったにも関わらず副会長をも凌ぐ高給取りであったことをゴーストライターの傍証とする人物もいる。

 病後も『新・人間革命』の連載が続いているのは、もはや開き直りというか破れかぶれになったのだろう。ま、後期仏教(大乗)がブッダの名を語った作り話みたいなものだから似たようなものか。

 ゴーストライター説が嘘なら構わないのだが、もし事実であったとすればどうなるのか? 創価学会員は池田大作の名前を冠せばいくらでも騙せるという結論が導かれる。オレオレ詐欺ならぬ池田池田詐欺といってよい。

 もう一つ突っ込んでおこう。ゴーストライターの役回りを務める連中に信心はあるのだろうか? ないね。あるわけないよ。そいつらは詐欺師なのだから。

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