2018-07-13

天皇制を巡る議論


 例えば武田邦彦と池田清彦は親しい間柄であるが、武田は尊王で安倍政権支持、池田の天皇制に関する姿勢は不明だが反安倍政権なのは確かだ。また対談集も出している小室直樹と藤原肇の場合、小室は尊王で、藤原は反天皇制で共和主義者だ。知的レベルがかように高い人でも天皇制を巡る議論は分かれる。あるいは藤井厳喜のように「天皇制社会主義なら左翼政権でも一向に構わない」とする保守派もいる。

 創価学会の場合、牧口・戸田は尊王、池田は左翼である(創共協定の過程で発言)。

 昭和一桁生まれが戦争を経験しているのは確かだが、戦争そのものを理解していると考えるのは誤りだ。小林よしのりが『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』で「少国民世代の反動」として鋭い論考を示した。彼らは精神の空白状態に耐えることができなかった。GHQは共産党員を獄から放ち、形を変えた分割統治を試みた。新聞・ラジオは一斉に軍人を叩き始め、国民は戦争を憎んだ。

 国民の間にどんよりと漂っているのは「天皇の戦争責任」であろう。緻密な研究に定評のある兵頭二十八〈ひょうどう・にそはち〉は「あり」としている。無論全く責任がなかったと考える人はいないだろう。ただし第二次世界大戦全体で捉える必要があるだろう。私は、ヒトラーやムッソリーニのような戦争責任が天皇陛下にあったとは考えない。大東亜戦争の途上で日本には独裁者が不在であった。これが東京裁判をややこしくしているのだ。

 自分たちが行った広島・長崎の原爆ホロコーストの罪を薄めるためにアメリカが考え出したのが南京大虐殺である。戦争状態となれば確かに一部で残虐な行為があったのは確かだが、日本軍が大量虐殺に手を染めた事実はない。それゆえ第二次世界大戦の枠組みで作られている国際社会ではいまだに日本を貶める工作が続いているのだ。

 ただし特攻隊として学徒を犠牲にしたことや、シベリア抑留という歴史の汚点を忘れることはできない。

 江戸時代の身分は西洋のようなガチガチの階級制ではなかった(杉浦日向子)。明治維新の主役が下級武士であったのも証拠の一つである。そして国論を分けた明治維新において開国派も攘夷派も尊王を掲げた事実を見逃してはなるまい。更に重要な歴史的事実は一君万民という思想があったゆえに日本には奴隷が存在しなかった。

 日本は世界最古の国である。


 天皇陛下に対して白人権力者であるイギリス女王やローマ法王が敬意を表する理由がここにある。

 その日本の伝統を支える屋台骨が天皇陛下であり、イデオロギーと無縁なところに私は日本の豊かさを思うのである。

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