このように、スコラ哲学は、単なる神学の婢(はしため)、中世暗黒時代の象徴などではなく、近世、近代の出発点としてとらえ直すことができるわけでありますが、更に深く考えると、それ自体においても、一つの文化の大きく輝いた栄光の時代であったと、みなければならない。
【「スコラ哲学と現代文明」創価大学第2回滝山祭記念講演 1973.7.13】
この講演は若い時分に何度か読んでいるがチンプンカンプンであった。それ以降もスコラ哲学に関する知識は皆無のままである。ざっと通読したが牽強付会の謗りを免れないように思う。個人的には以下の短い記述の方が腑に落ちる。
15世紀頃からはじまった西欧ルネサンスは、宗教の束縛からの人間精神の解放劇であった。その幕があけて、始(ママ)めて自然科学の発展も可能になる。それまではアリストテレスの流れをくむスコラ哲学によってすべての自然現象が解釈され、キリスト教会の権威づけの手段としてもちいられた。当時のキリスト教会は精神面だけではなく政治的にも有力な支配者であったからコペルニクス、ケプラー、ガリレオといった時代の先駆者たちは、精神と政治の両方の権威にたいする挑戦者でもあり、幾多の迫害を受けることになる。
【『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也〈まつだ・たくや〉、二間瀬敏史〈ふたませ・としふみ〉(丸善フロンティア・サイエンス・シリーズ、1987年)】
直前には「このアリストテレスの説が権威となって、それが後にキリスト教会の権威と結び付き、ヨーロッパの科学は16世紀まで続く暗黒時代に入っていくのである」とも。教会の権威に鉄槌を振り下ろし、近代の幕を開いたのは科学であった。知識が広まると教会の嘘は通用しなくなった。ヨーロッパ社会の近代化を実際に促進したのは金融である。「発見の時代」(Age of Discovery/大航海時代)における株式会社の創設と、銀行システムの成立が経済革命となった。
アリストテレスの学説はあまりにも偉大であったがために、長くヨーロッパ人の脳を束縛してしまったのだ。権威がまさに崩壊する前段階のヒステリーとして魔女狩りの嵐が吹き荒れる。同時に彼らは帝国主義の兵士として世界中で虐殺を開始する。これを防ぎ得たのは日本だけであった。鎖国を可能にしたのは世界最大の軍事力であった。
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