今、ひとりの「カリスマ」が、業界構造の頂点から転げ落ちようとしている。カリスマの名前は佐野眞一氏。近年では書籍『あんぽん 孫正義伝』が、十数万部も売れたベストセラー作家にして、大宅賞作家だ。人は彼のことを「ノンフィクション界の巨人」と呼ぶ。しかし「巨人」は「虚人」だったことが、2012年10月に起きた佐野氏による『週刊朝日』の連載記事「ハシシタ 奴の本性」の人権侵害問題を契機に、いみじくもバレてしまった。
実は「ハシシタ 奴の本性」が表のメディアで騒動となっていたのと同時期、佐野氏のかつての仕事仲間、猪瀬直樹・現東京都知事のツイートをきっかけに、27年間にもわたる「盗用・剽窃」行為が、ネットメディアの精緻な調査によって次々と暴かれた。ネット発、前代未聞の「大量盗用スキャンダル報道」に、大手週刊誌も追従するものと期待された。しかし……一部の報道を除けば、いまだにこの一件は黙殺されている。
本書は27年前に佐野氏から盗用の被害を受けたノンフィクションライター溝口敦氏の発案によって誕生した。
佐野氏は「ハシシタ 奴の本性」問題、さらには『ガジェット通信』荒井香織記者の追及に対して、『週刊ポスト』『創』誌上で釈明文を公表してきた。佐野作品を「商品」として頒布する版元は、この釈明文によって「禊(みそぎ)」とする腹積もりのようだが、だからといって27年間にわたる盗用行為に“恩赦"が与えられる道理はない。
本書では、出版界内部からの自浄作用を促すことを目的に、佐野作品に発覚した140件以上の盗用・剽窃箇所(ネットメディアではまだ指摘されていない盗用を多数発掘)および、その疑惑をすべて公開するとともに、佐野氏の釈明がいかに欺瞞に満ちたものなのか、徹頭徹尾、指弾する。
溝口敦氏の切れ味するどい批判論考を中心に、佐野取材班として活動してきたジャーナリストの安田浩一氏・今西憲之氏×断筆派のジャーナリスト西岡研介氏の激論座談会、佐野ブランドが週刊誌ジャーナリズムの「てっぺん野郎」に上り詰めた業界構造の解析、盗用被害者の手記、告白、そして新たに発見された「無断引用」への佐野氏の詫び状公開など、内容は盛りだくさん。
全出版人、マスコミ関係者、取次ぎ、書店関係者、そして何よりも「佐野文学ファン」必読の書! 読者はこうして27年間、欺かれてきた!
編集権が独立していても広告掲載権は朝日新聞社の判断が問われます。あのタイトルに問題なしとして掲載した公器としての責任は大きいですね。RT @t_ishin
本日の記者会見で、…週刊朝日は別会社という答えしか返ってきません。http://t.co/UiTVICf3
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
1985年11月号月刊『現代』「池田大作『野望の軌跡』」(佐野眞一)は1981年三一書房刊『池田大作ドキュメントー堕ちた庶民の神』(溝口淳著)からの盗用が10数箇所もあり、翌月『現代』12月号に「お詫びと訂正」があります。このときから品性に疑問をもち付き合いをやめました。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
1990年文藝春秋刊『紙の中の黙示録』(佐野眞一著)の38P~43Pは1988年文藝春秋刊『新東洋事情』(深田祐介著)の70P~73P(文庫版)と瓜二つで大宅賞選考委員だった深田氏は「なぜこんな本を候補作にしたのだ」と怒った。業界が甘やかして何でもありをつくった反省も必要。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
編集者は担当したことが恥じで表に出さない。河岸を変えればわからないと犯罪が繰り返される。RT @tazakikenta
有名な話、最近の編集者は知らない RT @inosenaoki 『紙の中の黙示録』(佐野眞一著)38P~43P『新東洋事情』(深田祐介著)70P~73P
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
1993年講談社刊『日本のゴミ』(佐野眞一著)359Pは1987年PHP刊『ドキュメント東京のおそうじ』(山根一眞著)131,132Pから盗用、タイトルが似てるだけでなく目次もそっくり。著者が悲憤慷慨して電話してきた。編集者は触れたくない、裁判コストもたいへんだしね。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
「ハシシタ」とタイトルをカタカナで書くことだけでも、ちょっと待てよ、こんな表現でいいのかと週刊朝日編集部が疑問を抱かなかったこと、言論表現の自由の問題が言論表現の規律の問題と表裏一体である戦いの厳しさがわかっていない。『ラストニュース』参照。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 18
朝日新聞10月19日朝刊、マンガ「ののちゃん」の対面に「朝日新聞出版がおわび」「週刊朝日の橋下市長連載で」と見出し。だが筆者名なし、また広告をチェックせずに掲載した点に触れず。公器としての新聞があの「ハシシタ、DNA」のタイトルそのまま掲載の謝罪なしは不自然だね。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 19
「週刊朝日との共同作品」佐野眞一言い訳コメント。作家としてそれはおかしい。記者を取材で使っても責任は筆者が負う。取材協力者が明記されてもデータ原稿を渡すのみ、単行本あとがきでの謝辞が通常。作品だからね。雑誌掲載権は編集長、およびタイトルは相談のうえで合意が通常。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 19
月刊『現代』1985年11月号盗作事件で平謝りからすぐ『新潮45』1986年9月号「ドキュメント『欲望』という名の架橋」(佐野眞一)は、『創』1986年6月号「東京湾横断道路の大魔術」(佐野良衛)「川崎に扇島…」以下まる写し箇所。半年後に再犯、もう付き合えないと思った。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 19
週刊ポストに連載された佐野眞一「化城の人」は、1971年に新人物往来社から出た「戸田城聖ー創価学会」日隈威徳著よりの剽窃39箇所。量が多すぎてツイッター向きでない、苦笑。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 23
佐野眞一週刊ポスト「化城の人」の記載。連載第15回目はほとんど文脈を含め「戸田城聖ー創価学会」日隈威徳著のまま。ちなみに同書は創価学会を賛美したものではない。1971年に出版されているのでバレないとでも思ったのだろうか。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 23
1981年「堕ちた庶民の神」溝口敦著が1985年11月号「月刊現代」で佐野眞一「池田大作・野望の軌跡」当時、確認した盗作疑いの赤線引き箇所は56箇所。担当編集者にとって生涯の痛恨事だった。ふつうならこうした寝た子を起こすネタに近づかない。“癖”としか考えられない。
— 猪瀬直樹/inosenaoki (@inosenaoki) 2012, 10月 23