『頼基陳状』について、『縮刷遺文』は重須(北山)本門寺所蔵日興写本を底本としている。これは「龍三問答記」との内題を持ち、「再治本」を写したものである8)。重須本門寺には、もう一本『頼基陳状』の写本があり、日興筆と伝承されてきたが、近年、日澄筆であることが主張されている)。この日澄本は「龍象問答抄」と末尾に記され、近世の刊本(寛永20年版にもとづく寛文版・宝暦版)と同系統の本文である。『縮刷遺文』は「此書ニ草案ト再治ノ二本アリ其御草案ハ今ト大同ナリ今ハ再治ヲ取ル」と記している。たしかに日興本と日澄本は内容的には大体同じであるが、表現や表記などはかなり異なっている。
【『縮刷遺文』の本文整定について 前川健一(PDF)】