2019-03-08

公明党は全体主義政党

 三島さんは石原氏の多少の自嘲まじりの党批判を、なぜ咎め立てするのか。これがもし公明党のように一言でも党創立者に批判めいたことを言ったが最後、次の選挙に立候補させてもらえない全体主義政党なら、そのときにこそ政治的諫死をすべきではないか。石原氏の発言はたしかに痛烈ではあったが、いわば放談である。それを「士道にもとる」と叱るのは、スターリニズムというより時代錯誤のファナティシズムだ。

【『五衰の人 三島由紀夫私記』徳岡孝夫〈とくおか・たかお〉(文藝春秋、1996年文春文庫、1999年/文春学藝ライブラリー、2015年)】

 三島由紀夫がクーデターを決行したその日、二人の記者が陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にいた。NHKの伊達宗克〈だて・むねかつ〉と『サンデー毎日』の徳岡孝夫である。彼らは三島から連絡を受けていた。そして到着するなり楯の会メンバーから三島が書いた手紙と檄文(げきぶん)を渡される。三島が選んだ生き証人であった。

 ここに書かれている三島の石原慎太郎批判はかなり有名な話だ。『諸君!』誌上で行われた石原と高坂正堯〈こうさか・まさたか〉の対談に向けたもので、石原の内部批判をする精神を厳しく衝いた(毎日新聞の夕刊に掲載)。

 批判を許さないこと自体が弱さの裏返しである。どのような神格化もたった一つの矛盾で綻(ほころ)ぶ。全体主義政党は党代表選挙すら許さない。その意味から申せば、公明党と日本共産党は誰かの独裁を認める政党である。

五衰の人 三島由紀夫私記 (文春学藝ライブラリー)
徳岡 孝夫
文藝春秋
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