会社がバブル形成に向かって大儲けしている時に、異論を唱えたり、警鐘を出すディーラーは首になる。
バブルや、通貨危機、ロシア危機など、金融機関が右に倣えで大儲けしている時、多くを見てきたベテランは懐疑的になる。そして、会社やチームで浮いた存在となり排除される。バブルが繰り返されるたびに、そうしたまともなディーラーがいなくなり、バブルの崩壊で残りのディーラーもいなくなる。そして、誰もいなくなったのが証券、金融界だ。
【サブプライム危機の再来に備えよ! リーマン・ショックの真相(後編)=矢口新】
出る杭は打たれる。本当であれば、いくつかの出る杭が確認された時点で建物自体を改造・拡張すべきなのだ。社会には異質なものを排除する機能がある。これは洋の東西を問わない。しかし日本におけるコミュニティ性の限界には顕著な特徴がある。例えば明治維新で尊皇の精神を樹立した会津藩が賊軍とされた経緯。あるいは明治から昭和に至るまでの藩閥。そして二度の大戦に渡る海軍と陸軍の確執。近代以降を俯瞰すれば権力主体は侍~軍人~官僚とシフトしてきた。政治の主導性は殆ど見られない。辛うじて大東亜戦争敗戦後に国体を護持するために吉田茂が抜きん出たネゴシエーションを発揮した程度である。この問題を照射した人物は私が知る限り小室直樹ただ一人である(『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』ダイヤモンド社、1976年)。
矢口新〈やぐち・あらた〉は為替・債券ディーラーで名文家として知られる。『生き残りのディーリング』(東洋経済新報社、1990年/改訂版、パンローリング、2001年)はプロの教科書であった。そんな彼が今頃になってのこのことネットに登場し、有料情報で商売をする姿は見たくなかった。