思うに、人間のヒューマニスティックな感情は、ある連帯的な関連の中ではじめて保証された姿をあらわすものではないのだろうか。良心は場所を選ぶのではないだろうか?(「妄想とその犠牲」)
【『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘〈ひらかわ・すけひろ〉編(藤原書店、2016年)】
今年の読書遍歴では竹山道雄との出会いが最大の収穫であった。個人的に2009年前後からキリスト教関連書籍を読み漁ってきたが、本書と『みじかい命』(新潮社、1975年)で止(とど)めを刺した感がある。私にとってはそれほどまでに強烈であった。「妄想とその犠牲」は『文藝春秋』1957年(昭和32年)11月号、1958年(昭和33年)1~4月号に掲載された評論である。ナチスドイツが行ったホロコーストを凝視し、その原因はキリスト教にありと鋭く喝破している。戦前の日本では同盟国の元首たるヒトラーを手放しで礼賛する言論が他を圧する中で、竹山はたった独りで批判してみせた。「これほどの日本人がいたのか」というのが率直な感想である。
西洋一神教の世界 〔竹山道雄セレクション(全4巻) 第2巻〕
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竹山 道雄
藤原書店
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