2012-12-15

松本清張×池田大作

松本●公明党のそういう労働組合政策ですが、すでに公明党労組の結成そのものに対しても、労働者への裏切り行為だ、という声が上がってくる。

池田●そんなことをいうこと自体が労働貴族のセクショナリズムであり、エリート化ではないですか。もっと幅広く真に労働者が何を欲しているかを知るべきです。今のままの労働組合でよいと思っている人が幾人いるでしょうか。私どもはいじめられどおしだったから、やむにやまれず立ち上った(ママ)、というのが真相なんですよ。
 日本の労働組合でも政党でも、あくまで大衆庶民のためになればいいではないですか。ほんとうに民衆がよくなれば、公明党がどうなってもかまわない。共産党でも民社党でもいい。民衆の方が大事だ。
 労働者が主義主張のため、一部の者の利益のために利用されたりするのはわたしたちのいちばん忌み嫌うことです。そしてまた、かわいそうな人は守りたいですね。自民党のお偉方は、まるで大臣様の政治、議員様の政治みたいに考えていますよ。そこへいくと、戦前、主義主張のために、血みどろになり、牢に入り、戦ってきた左翼の人たちの方がどんなに尊いかしれない。人間の本質や偉さは、世間の表面だけではわからない場合が多い。

【『文藝春秋』1968年(昭和43年)2月号】