ブッダはやさしく話をはじめた。「ひとたび教義を信じこんでしまえば、すべての自由が失われます。教条主義に陥ったら、自分の教義が唯一の真理で、他のすべての教義は異端だと信じるようになる。この世の論争や衝突はすべて、このような偏狭な見解から起こるのです。貴重な時間を浪費して、はてしなく議論を拡大し、ついには戦争まで引き起こすことすらある。だから何かの見解に固執することは修行の最大の障害なのですね。偏狭な見解にとらわれていると、その見解にがんじがらめになるあまり、真理の扉をひらくことができなくなってしまいます」
【『小説ブッダ いにしえの道、白い雲』ティク・ナット・ハン:池田久代訳(春秋社、2008年)】