2012-09-11

ベイルマンやフェリーニの映画



 ベイルマンフェリーニの映画は、物語映画よりはるかに関与性を要求する。物語の筋は音楽のメロディの流れにも似て、一群の出来事を囲い込む。メロディとはメロス・モドス(すなわち、一周りの道)であり、東洋の「クール」な芸術においては使われることのない継続的、連結的、反復的な構造のことである。禅の芸術と詩歌とは、視覚によって組織された西欧世界で使われる連結によってでなく、空隙によって相手の関与性を生み出す。東洋の芸術で見る者が芸術家になるというのは、見る者がいっさいの連結を自身で補充してやらなければならないからである。

【『メディア論 人間の拡張の諸相』マーシャル・マクルーハン:栗原裕〈くりはら・ゆたか〉、河本仲聖〈こうもと・なかきよ〉訳(みすず書房、1987年)】

メディア論―人間の拡張の諸相