ところが、その具体的な内容は、9条の1、2項はそのまま残し、新たに付け加える3項で自衛隊の存在を明文化するものだった。これは、自民党がこれまで実現を目指してきた9条改正、ひいては「自主憲法」という全面的な改正とはまったく異なるものである。むしろ連立を組む公明党が主張している加憲論に限りなく近いものだ。
はたしてこれで、首相がスローガンとして掲げる「戦後レジームの脱却」が実現できるとは思えない。実は、首相が公明党に歩み寄る姿勢を見せたのは、東京都議会選挙を意識してのことだろうと思われるのである。
【島田裕巳】