宗教多様性とは人口学的事実であり、キリスト教側の恩恵的理解に潜む植民地主義の残滓を批判しながら、諸宗教の差異にこそ価値がある、対等な価値を認めよと鋭く迫るマイノリティー(先住民や移民)の声に応える形で議論され始めたものだ。その意味では、アメリカの文化多元主義と同じ脈絡で理解可能な議論なのだが、宗教というのは普遍性を個別主義的価値によって探求する営みなので、文化多元主義の相対主義に妥協することはないし、敬意を表すべき宗教かどうか、の判断をめぐって信念を闘わせることになる。
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櫻井義秀氏(北海道大大学院教授)】
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櫻井義秀