・師弟の否定
大師や導師(グル)が誰かということがそんなに問題なのですか。問題なのは生ですよ――導師(グル)や大師や指導者、あなたのために生を解釈してくれる教師ではありません。生を理解しなくてはならないのは【あなた】です。苦しんで、みじめなのは【あなた】です。死や誕生や瞑想や悲しみの意味を知りたいのは【あなた】です。誰もあなたに教えられません。他の人は説明はできますが、彼らの説明はすべて誤りで、完全にまちがっているかもしれません。
【『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ:藤仲孝司〈ふじなか・たかし〉訳(平河出版社、1992年)】
贈ったり勧めたりすることの多い本だが、まず理解する人がいない。「難しい」と言われることが殆どである。その度に「馬鹿なのか? オメーは」と応じてしまう私はまだまだ修行が足りないのだろう(尚、本当の修行とは修練を意味しない)。
難しいと感じるのは特定の思考の枠組みが邪魔をするためなのだろう。信念・思想・宗教がものの考え方を狭めて、自分にとって都合のよい情報しか取り入れることができなくなってしまうのだ。
ありのままに読めば大地が水を吸うように言葉が染み入ってくる。私にとっては「読む瞑想」といってよい。わかるわからないではなく、ただ情操が清められ、知性が明晰となり、世界が明るく感じられるようになるのだ。
クリシュナムルティと比べれば日蓮すら卑小に見える。日蓮は古いテキスト(教条)に従属して悟りの光があまり感じられない。佐渡流罪前後に劇的な自覚の変化があったとされるが、そこに悟りを深めた痕跡が見当たらない。日蓮系の諸君は、なぜ欧米で禅が受け入れられたかのかを真剣に模索する必要があろう。
大切なのは師ではなく「教え」である。クリシュナムルティは弟子という存在をも否定した。
子供たちとの対話―考えてごらん (mind books)
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J. クリシュナムルティ
平河出版社
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